先生方が銀イオン配合クリームを、製品あるいは自家製剤で使われる場合のQ&Aです。私が自家製剤で治療を行っていた時に分かったことを中心に掲載しています。ご参考になれば幸いです。
銀に対するQ&A
Q:銀イオンには毒性がないのですか?
A:原則安全と言われています。銀イオンの安全性に関しては、WHO の『Guidelines for drinking-water quality』では、銀 イオンによって飲料水の消毒を行うケースを想定し、飲料水中の銀濃度が100ppb であっても健康上の害はないとの見解が示されています。
Q:銀イオンには硝酸塩など有害な成分は含まれていないのですか?
A:銀イオンは特殊な製法で作成していますので、硝酸塩などの有害物質は含まれていませんので飲んでも安全です。
Q:銀イオンは不活化しないのですか?どのくらいの期間大丈夫なのですか?
A:紫外線に当たると不活化しますが、遮光していれば3年ほどは活性が保たれます。
Q:細菌、例えば溶連菌などにも効果がありますか?
A:今のところ全ての細菌に関して殺菌作用が認められています。
Q:細菌は耐性菌など効果がないものはありますか?
A:銀は耐性菌を作りにくく、全ての細菌に効果があると言われています。
Q:他のウイルスではどのようなウイルスに効果がありますか?
A:文献ではポリオウイルス、ロタウイルス、ヘルペスウイルスに効果があると言われています。
Q:パピローマウイルスには効果がありますか?
A:試用の結果、有効ではないと判断しております。
Q:銀にアレルギーはある人に使えますか?
A:銀はアレルギーを起こしにくい金属と言われていますが、アレルギーを起こした方は残念ながら対象外です。
Q:銀イオンの殺菌機序は?
A:銀イオンは各種の細菌の細胞の中に侵入して細胞遺伝子の分離をブロックして死滅させると言われています。
Q:銀イオンは水虫など白癬菌にも効果がありますか?
A:真菌に対する殺菌力に関するデータでは非常に効果があることが確認されています。
銀配合クリームに対するQ&A
Q:銀配合クリームの効果判定は?
A:治療開始後平均約2カ月で丘疹が赤くなってきます(BOTE Sign)。それは効果が出始めたサインです。通常それから1から2カ月で消退します。
Q:治療後あまり変化がない場合はいつまで使い続けるのですか?
A:丘疹が赤くなってきたら効果があるサインですので、そのまま使い続けてください。全く変化がない場合でも、最低3カ月は使い続けてください。伝染性軟属腫に対する免疫反応が起こるまでには個人差がありますので、時間がかかる場合があります。自験例では丘疹が赤くなるまで8カ月かかった症例もありました。6カ月経っても何の変化もない場合は、他の方法に切り替えたほうが良いかもしれません。
Q:銀配合クリームの安全性は?
A:試用症例が多数ありますが、重篤な副作用はありません。数例報告がありましたが、接触皮膚炎や塗布部位のかゆみなど軽微なものばかりです。
Q:銀配合クリームの使い方は?
A:伝染性軟属腫の小丘疹に1日2回塗布してください。
Q:外陰部にも使えますか?
A:原則粘膜でも問題ありません。
Q:ゲーベンクリームとはどう違うのですか?
A:ゲーベンクリームは1%スルファジアジン銀クリームで、硝酸銀の様にあくまでも銀の化合物で副作用の点で色々問題があるのはご承知でしょう。その副作用など有害作用のためクリーム中の銀イオンの含有量を上げる事ができません。銀配合クリームに配合した銀は化合物ではなく遊離した単体の銀イオンですので、副作用の問題が無くMIC(最小発育阻止濃度)をはるかに超えた高濃度までも配合可能です。
なおゲーベンクリームには抗ウイルス作用に関して報告がありません。濃度は低すぎて効果が無いのではと考えられます。
サクラン銀軟膏に対するQ&A
Q:ステロイド軟膏と比べて抗炎症効果はどれくらいあるのですか?
A:学会報告データを見ていただくとお分かりになるでしょうが、抗炎症作用はクロベタゾン酪酸エステル軟膏をワセリンで半分に薄めた軟膏との比較でそれよりは強いと言う結果です。よって抗炎症作用はⅣ群のステロイドよりは弱いが、Ⅴ群よりは強いと言う程度です。しかしステロイドには無い抗菌・抗真菌・抗ウイルス作用がありますし、副作用がまずありませんので、その点を含めて総合的に考えればステロイドより使いやすいと考えております。
Q:陰部にも使えますか?
A:ステロイドの皮膚吸収率で、陰部からの吸収率は前腕内側の40倍以上と報告されていますので、陰部は非常に副作用が出やすい部位ですし、また真菌の二次感染を起こしやすい部位でもありますので、それらから判断してこのクリームは第一選択の薬剤と考えられます。
Q:乳児の顔面の湿疹には使っても安全ですか?
A:配合剤は全て口に入れても安全な物質ですので、原則なめても大丈夫ですから問題なく使えます。
Q:目の周りの湿疹には使えますか?
A:ステロイドの場合、目に入ると緑内障を発症する危険性がありますが、この軟膏は全くそれがありませんので、良い適応だと思います。なお勿論目に入っても大丈夫ですが、浸透圧などの問題より入った場合はしみると言う問題はありますが、安全性に関しては問題ありません。
Q:オムツかぶれには使えますか?
A:オムツかぶれはカンジダ菌の二次感染を起こしやすいので、抗炎症作用と抗真菌作用があるこの軟膏は最適と考えられます。
Q:火傷には使えますか?
A:火傷は直後から数時間は強い炎症がありますのでまずは患部を冷やす事ですが、その後もまだ炎症が残っていますので初日の治療はステロイドがファーストチョイスです。2日目には炎症はある程度治まっていますので治療は感染に対する治療となりますので、通常抗菌外用剤をつかいます。しかしながらサクラン銀軟膏は抗炎症作用と抗菌作用を兼ね備えていますので、火傷初日から治癒するまで継続して使えます。さらにサクランの強力な皮膚保護作用により、瘢痕を残しにくい特徴がありますので、第二度までの火傷には第一選択薬と考えております。数例だけですが、実際にある施設で外傷性潰瘍での臨床治験をしたところ、瘢痕を残しにくい事が分かっております。
Q:その他にはどんな皮膚疾患に使えますか?
A:腫瘍性のもの以外の皮膚疾患ほとんどに使えますので、適応が無いものが無いと考えてください。つまり皮膚トラブルのほとんどに使えます。
Q: 痤瘡には効果がありますか?
A: 痤瘡はアクネ菌とマラセチア菌の混合感染であることが多く、また耐性菌の問題もあり通常の抗菌剤治療ではあまり効果がありませんし、最近の流行の消毒剤配合のクリームもその抗菌作用は弱く、期待するほどの効果が無いと聞いております。またいずれも痤瘡の毛胞周囲の強い炎症に対する抗炎症効果は期待できません。しかしこの軟膏は銀イオンの抗菌作用の実験結果からもお分かりになるでしょうが、非常に強い抗菌作用があり、また抗生剤の様に耐性菌の心配がほとんどありませんし、なにより抗炎症効果があるので、痤瘡をすばやく軽快させます。さらにサクランの強力な皮膚保護作用と抗炎症効果との相乗効果によりにより、瘢痕を残しにくい特徴がありますので、痤瘡が出来ても痕が出来にくいと考えられます。
Q:炎症が強い痤瘡には使えますか?
A:通常の痤瘡薬には抗炎症作用はありませんが、サクラン銀軟膏には抗菌作用に加え抗炎症作用があり、特にサクランの抗炎症作用により炎症を速やかに抑えますので、痕が残りにくいと言う特徴があります。つまり炎症が強い痤瘡こそ良い適応です。
Q:使用制限はありますか?
A:他の製剤と異なり制限はありませんので、赤ちゃんから成人まで、しかも妊婦さんにも安心して使えます。
Q:他の痤瘡用製剤との違いは?
A:以下のまとめを参照してください。
痤瘡用外用剤のまとめ
(1) 過酸化ベンゾイル製剤
染髪や歯の漂白剤、化学的な殺菌作用と角質溶解作用
作用:抗菌作用
問題点:銀イオンに比べると抗菌作用は弱く、接触皮膚炎を起こす事がある。刺激性あり。妊娠、妊娠している可能性がある人には使用できない。
製品名:ベピオゲル
(2) アダパレン製剤
作用:表皮角化細胞の分化を抑制することで、毛穴の閉塞を防ぎ痤瘡の形成を抑制
問題点:妊娠、妊娠している可能性がある人には使用できない、顔面のみの使用に限定。刺激性あり。
製品名:ディフェリンゲル
(3) 過酸化ベンゾイル+アダパレン製剤
作用:化学的な殺菌作用と角質溶解作用、加えて表皮角化細胞の分化を抑制することで、毛穴の閉塞を防ぎ痤瘡の形成を抑制
問題点:妊娠、妊娠している可能性がある人には使用できない、顔面のみの使用に限定。刺激性あり。
製品名:エピデュオゲル
(4) 過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン
作用:染髪や歯の漂白剤抗菌作用である過酸化ベンゾイルの殺菌作用と角質溶解作用、加えて抗生剤であるクリンダマイシンのダブル抗菌
問題点:妊娠、妊娠している可能性がある人には使用できない、長期使うと耐性が出来効かなくなる可能性あり。刺激性あり。
製品名:デュアック配合ゲル
(5) 抗生剤・抗菌剤製剤
問題点:長期使うと耐性が出来効かなくなる上に、菌交代現象によりマラセチアなど真菌の二次感染が起こる可能性あり。
製品名:アクアチムクリーム
ダラシンローション
サクラン銀軟膏
作用:抗菌作用(銀)、抗炎症作用(サクラン)
銀は過酸化ベンゾイルより強力な抗菌作用を示し、接触皮膚炎などの副作用の心配はほとんど無い
跡が残る痤瘡は炎症が強い場合で、その炎症を抑える痤瘡用外用剤はサクラン銀軟膏のみ